食道アカラシアとは
食道アカラシアは、食道の神経に原因不明の異常が起きることで、下部食道の括約筋が正常に緩まず、食べ物が胃にスムーズに進まず通過しにくくなる病気です。
主な症状として、食べ物や飲み物が食道に滞留し、窒息感や胸痛、嘔吐、体重減少などが現れます。食道アカラシアは一般的に10万人に2-3人の割合で発症すると言われ、年齢や性別に関係なく起こり得る病気です。
通常、胃カメラ検査で食道内に液体は貯留していませんが、アカラシアの患者では内視鏡を挿入すると食道が拡張しており、液体が貯留していることがしばしば見られます。
初めに内服薬による治療が試みられますが、効果が十分でない場合は内視鏡的な治療が必要となることがあります。
食道アカラシアの原因
下部食道括約筋は、胃から胃酸を含む内容物が食道に逆流しないように一定の圧力を保っています。また、飲み込む際には、唾液を含む食物を食道から胃へ進めるため一時的に緩んでいます。この運動は脳からの信号によって制御されています。食道アカラシアでは、この食道の下部食道括約筋の運動に何らかの障害が生じていると考えられています。
食道アカラシアの症状
食道アカラシアの主な症状は、食後に胸のつかえ感を感じることであり、重度の場合には吐き気や嘔吐も伴うことがあります。一部の患者さんでは、げっぷや胸焼けなど、胃食道逆流症と似た症状も現れることがあります。そのため、薬物治療が効かない患者さんの中には、実際には食道アカラシアが隠れている場合もあります。現在の報告では、食道アカラシアの有病率は10万人に1人とされていますが、潜在的な有病率はさらに高い可能性があります。また、前胸部痛や心窩部痛が見られることもあります。
食道アカラシアの検査
食道造影検査
バリウムを摂取し、食道と胃の接合部の通過状態を観察します。アカラシアでは下部食道括約筋の拡張が不良であり、食道が膨大している様子や曲がり具合が確認されます。当院では対応していませんので必要な場合には連携する医療機関をご紹介いたします。
食道内圧測定
細いチューブを鼻から食道に挿入し、食道内の圧力を測定します。通常、食物を飲み込むと下部食道括約筋は緩む反応を示しますが、アカラシアではこの反応が欠如しています。なお、当院では対応していませんので必要な場合には連携する医療機関をご紹介いたします。
胃カメラ
食道の拡張状態や食べ物の残留を確認するために内視鏡を使用します。また、アカラシアでは食道癌の合併リスクが高まるため、定期的な内視鏡検査が推奨されています。報告によれば、アカラシア患者の約3.5%が食道癌を発症する可能性があり、通常の人々と比較して約10倍の頻度とされています。
食道アカラシアの治療
生活スタイルの改善や内服薬の使用
症状や病状の程度に応じて、生活スタイルの改善や内服薬の使用が提案されます。カルシウム拮抗薬や亜硝酸製剤、漢方薬などが内服薬として使用されることがあります。
就寝前の食事制限
食事を摂った後、短時間で就寝すると食道内に蓄積した食べ物が逆流しやすくなるため、特に就寝前の食事制限が必要です。適切な時間の間隔を置くなどの工夫が必要です。
内視鏡的な治療
内視鏡的な治療法として、下部食道括約部を広げる目的で「食道ブジー」と呼ばれる方法が選択されることがあります。また、内視鏡を使用した筋層切開術であるPOEM(内視鏡的筋層切開術)も開発されています。