憩室炎・虫垂炎とは
憩室炎
憩室は、上行結腸やS状結腸から突き出た袋状の突起です。憩室炎とは、憩室内に糞石などが詰まり、その中で細菌感染が起こり、化膿する状態を指します。虫垂炎と基本的なメカニズムは同じですが、虫垂は右下腹部にのみ存在するのに対し、憩室は個人差があります。一般的には、憩室は右脇腹にある上行結腸や左下腹部にあるS状結腸に多く見られるため、憩室炎の場合、痛みは右脇腹や左下腹部によく現れることがあります。
急性虫垂炎
虫垂は盲腸に続く袋状の突起で、長さは約5cmほどです。異物や糞石などが虫垂内に閉塞を引き起こし、その閉塞した虫垂内で細菌感染が起こり、化膿する状態を指します。一般的には「盲腸炎」とも呼ばれています。炎症が軽度の場合は、抗生物質によって症状を軽減できることがありますが、炎症が進行すると手術が必要になることがあります。また、炎症が深刻化し虫垂に穴が開く場合は、「穿通虫垂炎」と呼ばれ、腹膜炎など重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
虫垂炎はなぜ盲腸という?
虫垂炎が「盲腸」と呼ばれるのは、虫垂が大腸につながる部分が盲腸(もうちょう)と呼ばれる部位に位置しているからです。盲腸は大腸の一部であり、虫垂が大腸の一部として付着しています。
虫垂は盲腸の一番先端にある5cm程度の袋状の突起であり、大腸内に突き出ています。虫垂炎は、異物や糞石などが虫垂内に詰まり、閉塞(へいそく)が起こることで炎症が生じる病態です。このように虫垂が盲腸につながる部分に存在するため、虫垂炎は俗に「盲腸」とも呼ばれるのです。
憩室炎・虫垂炎の原因
虫垂と憩室は、大腸から突き出た袋状の突起です。この突起に硬くなった便が詰まってしまい、袋を閉じてしまうことが原因となります。虫垂の場合、長い形状のためねじれてしまい、袋が閉じてしまうこともあります。袋が閉じてしまった内部では細菌が増殖し、炎症が引き起こされて膿がたまり、組織が弱くなります。弱くなった組織は突起内の圧力に耐え切れず、穴が開いてしまうことで症状が悪化します。
憩室炎・虫垂炎の症状
急性虫垂炎では、まず多くの方がみぞおちの痛みを感じます。そして、それと同時かやや遅れて右下腹部の痛みが現れます。腹部を押すと痛みを感じることがありますが、押した後に指を離すと痛みが強くなる場合は限局性の腹膜炎が疑われます。歩いたりジャンプしたりすると、右下腹部に痛みが響くことがあります。炎症が進行すると発熱が起こり、周囲の腸にも影響が及ぶため腹部の動きが悪くなり便秘や嘔吐が起こることもあります。炎症がさらに悪化すると虫垂に穴が開いてしまい、腸の内容物が腹腔内に漏れ出し汎発性の腹膜炎を引き起こし、手術が必要になることがあります。
一方、憩室炎は憩室の炎症の場所によって痛みが異なることがありますが、憩室は虫垂と同じく右下腹部から右側腹部や左下腹部に存在することが一般的です。そのため、右側腹部や左下腹部に症状が現れる場合は憩室炎を疑います。ただし、右下腹部の症状は虫垂炎と似ているため、状況によっては区別が難しいこともあります。
憩室炎・虫垂炎の治療
軽度の炎症の場合は、内服の抗生物質を使用して治療することが可能です。場合によっては点滴による抗生物質の治療を行うこともあります。しかし、炎症が進行して内服治療が見込めない場合や穿孔が生じて汎発性腹膜炎になった場合には、手術が必要となります。患者様の身体診察を丁寧に行い、採血やエコー検査などを行い、内服治療で治る見込みがあるか、それとも手術が必要と判断されるかを判定します。必要な場合は、連携する高度医療機関をご紹介させていただきます。
憩室炎・虫垂炎に良い食事
憩室炎や虫垂炎の場合、刺激の少ない食事や消化しやすい食材がお勧めです。
柔らかい野菜
蒸したり、茹でたりして柔らかく調理された野菜が適しています。例えば、かぼちゃ、じゃがいも、かぶ、キャベツ(柔らかく茹でたもの)、人参などが挙げられます。
柔らかい果物
果物は皮をむいたり、柔らかいものを選びましょう。例えば、りんご(皮をむいたもの)、バナナ、マンゴー、柔らかいパパイヤなどが適しています。
白身魚
脂っこい魚よりも白身魚が消化しやすいです。例えば、鯛、鱈、ヒラメなどがおすすめです。
軟らかい肉
消化しやすい肉を選びましょう。例えば、鶏むね肉、豚ヒレ肉、柔らかく調理した牛肉などが挙げられます。
米やパン
消化が良い炭水化物として、白米や白パンがお勧めです。
低脂乳製品
乳製品は脂肪が多いものもあるため、低脂乳製品を選びましょう。例えば、低脂肪ヨーグルトや低脂肪チーズが適しています。
軟らかいおかず
消化しやすいおかずを摂ることが大切です。例えば、煮物や蒸し物、豆腐料理、オムレツなどがお勧めです。
軟らかいデザート
デザートは軟らかく、繊維が少ないものを選びましょう。例えば、プリン、ヨーグルトムース、フルーツゼリーなどが適しています。
盲腸(虫垂炎)と思ったら憩室炎?
盲腸と憩室炎では、初期に同じような症状がみられることから適切な検査をしなければ勘違いされることもあります。勘違いされる理由としては、盲腸でも憩室炎でも右下腹部痛や腹部膨満感、便秘、下痢、食欲不振が見られることがあります。しかし、盲腸と憩室炎は異なる病気です。しっかり医師による診断を受けて、早期に適切な治療を受けるようにしましょう。