食道静脈瘤とは
食道静脈瘤は、食道の静脈が広がり蛇行し、瘤状に盛り上がり肉眼で見ることができる状態です。肝硬変を患っている方の約70%に合併するとされており、静脈瘤が発達すると破裂し消化管出血を引き起こす可能性があります。近年の医療の進歩にもかかわらず、破裂した静脈瘤は約20%の方が命を失うリスクがあります。そのため、破裂の危険性がある場合には予防的な治療を受ける必要があります。
食道静脈瘤の原因
食道静脈瘤の主な原因は、肝硬変などの肝臓の異常による門脈圧の上昇です。これを門脈圧亢進と呼びます。肝硬変以外にも、特発性門脈圧亢進症、バッド・キアリ症候群、慢性膵炎、肝がん、膵がんなど、門脈圧亢進を引き起こす疾患が存在します。
食道静脈瘤の症状
静脈瘤の発症だけでは特に症状は現れません。静脈瘤の原因となっている肝硬変などの基礎疾患による症状が見られます。
肝硬変の主な症状(食道静脈瘤破裂した場合の症状)
疲れやすさや全身倦怠感、食欲不振などがあります。進行すると黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、腹水、むくみなどが現れることもあります。
静脈瘤ができると、軽い刺激で傷ついて出血しやすくなります。出血が多量の場合、死亡する可能性もあります。静脈瘤の出血は肝硬変の三大死亡原因の一つです。食道静脈瘤が破裂すると、以下のような症状が現れます。
- 吐血(鮮やかな赤と黄色っぽい胃液が混ざったもの)
- 下血(黒い便;タール便)
- 貧血(急激な血圧低下やめまい)
食道静脈瘤の検査・診断
食道静脈瘤の検査・診断としては、バリウム検査や胃カメラ検査、CT検査、経皮経肝門脈造影検査(PTP)があります。バリウム検査やCT検査、経皮経肝門脈造影検査(PTP)が必要な場合には連携する医療機関をご紹介いたします。
食道静脈瘤の治療
出血に対する治療が重要です。食道静脈瘤の治療では、主に以下の2つの内視鏡的な方法が行われています。
食道静脈瘤硬化療法(Endoscopic injection sclerotherapy: EIS)
食道静脈瘤の内視鏡的治療法として広く行われています。
内視鏡を使用して静脈瘤を確認しながら、注射針と呼ばれる処置具を用いて硬化剤を注入し、静脈瘤を硬化させる方法です。当院では対応していませんので、必要な場合には連携する医療機関をご紹介いたします。
内視鏡的静脈瘤結紮(けっさつ)術(Endoscopic variceal ligation: EVL)
食道静脈瘤を内視鏡で結紮(縛って取り去る)する方法です。
EISに比べて患者さんへの侵襲が少なく、簡便で安全性が高いとされていますが、再発の可能性も高いとされています。
近年では、EISとEVLの利点を組み合わせて併用するケースも増えています。当院では対応していませんので、必要な場合には連携する医療機関をご紹介いたします。
食道静脈瘤を早期発見、早期治療するために
残念ながら、静脈瘤の有無は体外の診察や血液検査では分かりません。静脈瘤自体に特定の自覚症状はないため、自分自身では気づかずに静脈瘤が進行し、いつしか破裂して大量の出血を引き起こす可能性もあります。静脈瘤が破裂すると、瘤が破れることで大量の血液が失われ、体内の血液不足が生じてショック状態となり、命に関わる緊急事態となります。
破裂した静脈瘤に対しては内視鏡を使用した治療が有効ですが、出血を止めたとしても一時的に全身の血液量が不足することで、複数の臓器に負担をかける可能性もあります。そのため、静脈瘤が破裂しないように治療することが重要です。静脈瘤の状態を把握するためには、定期的な内視鏡検査による経過観察が必要です。
実際に、破裂のリスクが高い静脈瘤(ハイリスク静脈瘤)は内視鏡で確認することができます。ハイリスク静脈瘤には、赤く腫れ上がった血豆のような所見、ミミズのようにくねくねとした血管の拡張、数珠のように膨らみ蛇行を伴う形状などがあります。これらの所見が見られる場合は、予防的な治療が必要です。
特に、肝硬変を指摘されている方には、定期的な内視鏡検査(胃カメラ検査)を推奨します。
当院は肝硬変から内視鏡検査まで専門的に診られます
当院は、肝臓専門医・消化器病専門医・内視鏡専門医が在籍しています。健康診断で肝硬変を指摘された方から、定期的に胃カメラ検査を受けられる方、胃カメラ検査後に異常を指摘された方まで幅広く対応することができます。疾患・症状間の繋がりも専門的な知識を持ったうえで検討していきます。肝臓や腹部に何らかの異常を感じましたらご相談ください。